自分のことを自分の名前で呼ぶ人をどう思いますか? アメリカでは政治家やスポーツ選手が自分のことを自分の名前で呼んだりすることも多くみられます。たとえば、アメリカのプロバスケットボール選手のレブロンジェームスが2010年にチーム移転するときに言ったのが  “One thing I didn’t want to do was make an emotional decision. I wanted to do what’s best for LeBron James and to do what makes LeBron James happy.”

日々の生活で頻繁に使うとナルシストとか、自己中心的、教養がないなどと批判されがちですが、戦略的に使うと、緊張を要する状況にたちむかったり、ネガティブな出来事を捉えたりするときに役に立ちます。

2014年のKross らの投稿の実験の一つでは、ボランティアに公の場でスピーチをさせました。ボランティアは、スピーチ前後に自分が感じている感情について表現することが要求されましたが、片方のグループは第一人称で考え、他のグループは二人称もしくは三人称で考えることが求められました。

具体的には、一人称のグループは「Why did I feel this way?」「 What were the underlying causes and reasons for my feelings?」 と自分に問うように言われました。そうすれば、自分の中でも答えは 「I fell nervous」などと一人称になるというわけです。非一人称のグループには、I を使う代わりに、自分の名前やShe/He などを使って自分の気持ちを問いかけるように言われました。

結果、二人称もしくは三人称で話したグループの方が、リラックスした状態で良いスピーチをすることができたのです。それだけではなく、二人称もしくは三人称で話したグループの方では、スピーチに対してポジティブな感情を抱いた人が多かったという結果にもなりました(これは、自分以外の誰かがスピーチをする前にあなたが何か声をかけるとしたら?と考えると理解しやすいですね。XXさんならできるよ、練習したんだから、見ている方はそこまで考えていないよ、などと声をかけませんか?)。さらには、スピーチ後の感想でも、非一人称グループの方が自分のスピーチに対して好印象を持った人が多くでました。

ということで、政治家やスポーツ選手は人の目にさらされるという職業上、ストレス軽減のために戦略的に第二人称や第三人称を使っている可能性もありますね。

さてこの結果から言えることは?これを私たちが日々の生活に活かすには?

スピーチをしなければならない、インタビューを受ける、セールスコールをする、知らない人と会う、などというストレスの高い状況に立ち向かう前には、友達や同僚にアドバイスをするように自分に話しかける、ということです!

一人称の例: ”プレゼンで想定していなかった質問がきたらどうしよう” ”客から未熟だと思われたら嫌だな” ”緊張していることがバレたら恥ずかしい”

非一人称の例: ”XXさん(自分の名前)はしっかり準備したんだから大丈夫。” ”もし想定以外の質問がきたら「調べて後ほど答えます」っていえばいいんだよ” ”XXさんが緊張しているとわかったくらいの方が、客も真剣になって聞いてくれるよ’

またこの第二もしくは第三人称を使うとか、友達に話すように話しかける、ということはネガティブな状況(誰かに批判された、目標売り上げが達成できなかったなど)に自分を励ましたりするときにも有効です。

ちなみに、日本人の若者、特に若い女性が会話の中で自分の名前を使うのはどうなんだろう?と思った人は私だけではないと思います。上記の研究をしているKross によると、自分を他人のように考えて距離を置くSelf-Distance が有効なのは自分の中での会話、もしくは内省が必要とされるインタビューなどの状況だけということです。日々の会話でどう使われているか、どう使うと有効かなどについては、まだ研究が必要なようです。